【動物病院監修】犬のけいれん・てんかん~発作の原因と正しい対応、治療方法~
【動物病院監修】犬のけいれん・てんかん~発作の原因と正しい対応、治療方法~
はじめに
相模原市・町田市・八王子市の皆様こんにちは。
相模原市緑区にある、ほさか動物病院です。
「急に犬が倒れてけいれんした」「体が硬直して泡を吹いた」「数分間意識がなかった」──
飼い主様にとって、そんな突然の発作はとても驚く出来事です。
犬のけいれんには、脳の異常によるてんかん発作と、
肝臓・腎臓・心臓などの全身疾患によるけいれんの両方があります。
今回は、犬のけいれん・てんかんについて、原因・検査・治療・発作時の対応方法をわかりやすく解説いたします。
________________________________________
1.犬のけいれんとは?
けいれんとは、筋肉が突然強く収縮し、
体が震えたり、硬直したり、意識を失ったりする発作のことをいいます。
発作の持続時間は数秒から数分程度で、発作の後に「ぼんやり」「ふらつき」などの状態が見られることもあります。
けいれんは、「脳(神経系)」の異常で起こる場合と、「脳以外の臓器」が原因の場合に分けられます。
________________________________________
2.脳の異常による「てんかん」
① てんかんとは?
脳の神経細胞が異常な電気信号を発することで、
全身の筋肉が一斉に収縮し、けいれんや意識消失を起こす病気です。
犬では比較的多く見られ、発症年齢は生後半年〜6歳頃が多いといわれています。
________________________________________
② てんかんの種類
てんかんは大きく2つに分けられます。
• 特発性てんかん:脳に異常構造が見られないタイプ。遺伝的・体質的な要因で発作が起こります。
• 症候性てんかん:脳腫瘍・脳炎・外傷など、脳そのものに異常があるタイプ。高齢犬で増加傾向です。
________________________________________
③ てんかん発作の特徴
• 全身が硬直し、手足を伸ばして倒れる
• よだれを垂らす、泡を吹く
• 意識がなくなる
• 発作後にぼんやりして動きが鈍くなる
• 1~2分で自然に治まる
発作が短くても、繰り返す場合は要注意です。
________________________________________
3.脳以外の病気によるけいれん(症候性けいれん)
犬のけいれんは、脳以外の臓器の異常によって起こることもあります。
これを「症候性けいれん」と呼びます。
主な原因疾患
• 低血糖:小型犬や仔犬で多く、血糖値の急激な低下により発作が起こります。
• 肝臓病(肝性脳症):肝臓の働きが落ち、体内のアンモニアが脳に悪影響を与えます。
• 腎不全(尿毒症):老廃物が脳に作用し、けいれんを引き起こします。
• 電解質異常(低カルシウム血症・低ナトリウム血症):体液のバランスが崩れると、神経が過敏になり発作を起こします。
• 心疾患による失神との混同:心臓の不整脈などによる一時的な意識消失が、けいれんに見えることもあります。
このように、「けいれん=てんかん」とは限らず、
内臓や代謝の異常が原因で起こるケースも多いのです。
________________________________________
4.けいれん発作時の応急対応
けいれんが起きたときは、慌てずに以下のことを行ってください。
1️⃣ 触らず、安全な場所に移動させる
落下や衝突の危険がない場所で見守りましょう。
2️⃣ 口に物を入れない
舌を噛むことはありません。口を開けようとすると咬傷の恐れがあります。
3️⃣ 発作時間を計る・動画を撮る
発作の様子は診断の重要な手がかりになります。
4️⃣ 5分以上続く、または連続して発作が出る場合はすぐに動物病院へ
これは「重積発作」と呼ばれ、命に関わる危険な状態です。
________________________________________
5.ほさか動物病院での検査の流れ
当院では、けいれんの原因を見極めるために、
神経系と全身の臓器の両方を総合的に調べます。
検査内容
• 一般身体検査・神経学的検査:意識・反射・歩行状態を確認
• 血液検査:肝臓・腎臓・電解質・血糖値など、代謝異常の有無を調べます
• 尿検査:腎機能や体内バランスを確認
• レントゲン検査:胸部・腹部の異常をチェック
• 超音波検査(エコー):内臓疾患の有無を確認
• 心電図検査:不整脈による失神との鑑別に使用
これらで脳以外の原因が除外された場合、
脳疾患(てんかん・腫瘍・炎症)を疑い、MRI検査による精密検査を検討します。
MRIが必要と判断された際は、外部の専門施設をご紹介・受診を相談し、
検査結果を共有しながら治療を進めてまいります。
________________________________________
6.犬のけいれん・てんかんの治療方法
治療は原因によって大きく異なります。
① てんかんの場合
発作の頻度や重症度に応じて、抗てんかん薬(フェノバルビタール、イメピトインなど)を使用します。
薬の効果は徐々に現れるため、獣医師の指示のもとで定期的に血中濃度を確認しながら調整していきます。
発作が完全になくならなくても、発作を軽く・間隔をあけることを目標にします。
________________________________________
② 内臓疾患・代謝異常による場合
• 低血糖 → ブドウ糖の補給
• 肝性脳症 → 肝臓保護薬・食事療法・点滴
• 腎不全 → 点滴・食事療法
• 電解質異常 → 点滴や補正剤でバランス調整
• 心疾患 → 心臓薬や不整脈の治療
原因を特定して治療することで、けいれんそのものが改善するケースも多くあります。
________________________________________
7.発作を繰り返すときの注意点
けいれんを繰り返す場合、
脳や体に負担がかかり、次第に発作が起きやすくなることがあります。
そのため、
• 発作の頻度(1ヶ月以内に2回以上)
• 発作の持続時間(5分以上)
• 回復に時間がかかる
このような場合は早めの治療開始が望まれます。
また、抗てんかん薬を飲んでいる犬では、
定期的な血液検査で肝臓の状態や薬の濃度をチェックします。
________________________________________
8.ほさか動物病院のけいれん・てんかん診療の特徴3つ
① 全身を包括的に評価
神経疾患だけでなく、肝臓・腎臓・心臓などの全身疾患を同時に評価し、
原因を見逃さない総合診療を行っています。
② 犬にやさしい検査環境
検査中もできるだけ不安を与えず、落ち着いて診察を受けられるよう配慮しています。
③ 専門施設との連携
MRIが必要な際には外部施設への紹介を行い、
結果を共有して適切な治療方針を立てます。
________________________________________
9.終わりに
犬のけいれんは、脳の病気によるものだけでなく、
内臓や代謝の異常によっても起こる症状です。
一度の発作であっても、重大な疾患が隠れていることがあるため、
「様子を見よう」と思わず、早めの受診をおすすめします。
早期に原因を見つけることで、再発や重症化を防ぎ、
愛犬の健康と安心した生活を守ることができます。
もし発作を起こした、または発作のような動きがあった場合は、
ぜひ一度、ほさか動物病院までご相談ください。