【動物病院監修】猫ちゃんのけいれん・てんかん~神経疾患とその他の原因を正しく見極める~
【動物病院監修】猫ちゃんのけいれん・てんかん~神経疾患とその他の原因を正しく見極める~
はじめに
相模原市・町田市・八王子市の皆様こんにちは。
相模原市緑区にある、ほさか動物病院です。
「猫ちゃんが突然けいれんを起こした」「体を硬直させて倒れた」――。
このような光景を目にすると、飼い主様はとても驚かれると思います。
けいれんやてんかんは、脳の異常によって起こる神経疾患だけでなく、
心臓・肝臓・腎臓などの内臓疾患、代謝異常、低血糖などが原因になることもあります。
今回は、猫ちゃんのけいれん・てんかんについて、
その原因・検査・治療方法を分かりやすく解説いたします。
1.猫ちゃんのけいれんとは?
けいれんとは、筋肉が自分の意思とは関係なく強く収縮し、
体が震えたり、手足を伸ばしたり、倒れたりする状態をいいます。
発作の程度や持続時間はさまざまで、
短時間で治まる軽い発作から、長く続く重度の発作まであります。
けいれんを引き起こす原因は、大きく分けて次の2つです。
脳(神経)の異常によるもの=てんかん発作
脳以外(体の他の臓器)の異常によるもの=症候性けいれん
この2つを見極めることが、正しい治療の第一歩です。
2.神経疾患による「てんかん」
① てんかんとは?
てんかんは、脳の神経細胞が異常な電気信号を発することで、
突然のけいれんや意識消失などを起こす病気です。
猫ちゃんのてんかんは、原因によって以下の2種類に分類されます。
特発性てんかん(脳に構造的な異常が見られないタイプ)
症候性てんかん(脳腫瘍・炎症・外傷など、明らかな病変があるタイプ)
② てんかん発作の特徴
体を硬直させて倒れる
意識がなくなる
手足をばたつかせる
よだれを垂らす
排尿・排便してしまう
数秒~数分で治まる
発作の後にぼんやりしたり、ふらついたりする「発作後の混乱期」が見られることもあります。
③ てんかんの診断
猫ちゃんのてんかんは、発作の様子をよく観察することが診断の手がかりになります。
そのうえで、他の疾患を除外し、必要に応じて脳の精密検査を行います。
当院での主な検査
血液検査:肝臓・腎臓・電解質・血糖値の異常を確認
レントゲン検査:胸や腹部の疾患を除外
超音波検査(エコー):心疾患や内臓疾患の有無を確認
神経学的検査:反射や動作、瞳孔の反応などをチェック
これらで明らかな全身疾患が認められず、
脳の異常が疑われる場合は、MRI検査による脳の評価が必要になります。
当院では、MRIが必要と判断された場合は外部の専門施設への紹介・受診を相談しています。
適切な画像検査を行うことで、脳腫瘍や炎症性疾患などの原因を詳しく調べることが可能です。
3.神経以外の疾患によるけいれん(症候性けいれん)
猫ちゃんのけいれんは、必ずしも脳の異常だけで起こるわけではありません。
実際には、内臓疾患や代謝異常によって脳の働きが一時的に乱れた結果として起こるケースが多くあります。
代表的な原因を以下に紹介します。
① 低血糖
血糖値が下がりすぎると、脳が十分なエネルギーを得られず、けいれんを起こすことがあります。
特に若い猫ちゃんや、インスリノーマ(膵臓の腫瘍)などでは注意が必要です。
② 肝臓疾患(肝性脳症)
重度の肝臓障害があると、体内に毒素が蓄積し、脳に悪影響を及ぼします。
これを「肝性脳症」といい、けいれんや意識混濁、ふらつきなどが見られます。
③ 腎臓疾患(尿毒症)
腎臓機能が低下すると、老廃物が血液中にたまり、神経に影響を与えます。
慢性腎臓病の進行時に見られることがあります。
④ 電解質異常・低カルシウム血症
血液中のナトリウム・カルシウム・カリウムなどのバランスが崩れると、
神経の興奮性が高まり、けいれんを引き起こすことがあります。
⑤ 心疾患による失神との区別
一見けいれんのように見えても、心臓の拍動が一時的に止まる「失神」の場合もあります。
この場合は数秒で意識が戻り、発作後の混乱がないのが特徴です。
心臓のリズム異常(不整脈)が原因となることがあるため、心電図検査での確認が重要です。
4.ほさか動物病院での検査・診断の流れ
当院では、けいれんの原因を正確に突き止めるため、
「神経疾患」「代謝性疾患」「心疾患」などをすべて視野に入れて検査を進めます。
1️⃣ 問診・発作の観察
発作の様子、時間、持続時間、意識の有無を伺います。動画があると非常に参考になります。
2️⃣ 身体検査・神経学的検査
反射や動き、瞳孔反応を確認して神経系の異常をチェックします。
3️⃣ 血液検査・尿検査
肝臓・腎臓・血糖値・電解質・カルシウムなど、代謝異常を調べます。
4️⃣ レントゲン・エコー検査
内臓疾患や心疾患による発作を除外します。
5️⃣ 必要に応じてMRI検査(外部施設紹介)
脳腫瘍や炎症性疾患など、脳の構造的異常を疑う場合は外部施設にご紹介いたします。
このように、けいれんは「脳だけを見るのではなく、全身を調べて初めて見えてくる病気」です。
5.治療方法
けいれんやてんかんの治療は、原因によって大きく異なります。
① てんかんの場合
抗てんかん薬(フェノバルビタール、イメピトインなど)を継続投与します。
発作の頻度や強さに応じて薬を調整します。
発作がなくなっても、一定期間は投薬を続けて再発を防ぎます。
② 内臓疾患・代謝異常による場合
低血糖:ブドウ糖の補給
肝臓疾患:肝臓保護薬、食事療法
腎臓疾患:点滴・腎臓療法食
電解質異常:点滴やサプリメントで補正
心疾患:心臓の治療薬による循環改善
原因を治療することで、けいれん自体も改善していきます。
6.発作時の応急対応
猫ちゃんが発作を起こしたときは、
慌てずに次の点を意識して行動してください。
無理に抱き上げず、安全な場所で見守る
口に物を入れない(舌を噛むことはほとんどありません)
時間を計り、動画を撮影できると診断の助けになります
発作が5分以上続く、または繰り返す場合はすぐに動物病院へ
7.ほさか動物病院のけいれん・てんかん診療の特徴3つ
① 全身性疾患も含めた幅広い視点での診断
当院では「神経疾患だけ」でなく、「内臓・心臓・代謝」も同時に評価し、
けいれんの根本原因を正確に探ります。
② 猫ちゃんへのストレス配慮
検査や処置時に猫ちゃんができるだけ落ち着けるよう、
静かな環境と丁寧なハンドリングを徹底しています。
③ 専門検査が必要な場合は外部施設と連携
MRIや脳波検査が必要な場合は、外部の画像診断施設への紹介を行い、
検査結果を共有しながら治療方針を一緒に立てていきます。
8.終わりに
猫ちゃんのけいれんやてんかんは、命に関わる重大なサインであることもあります。
一度きりの発作でも、背景に内臓疾患や神経疾患が隠れていることがあるため、
軽視せず、早めの受診が大切です。
発作の原因を突き止めるには、全身を総合的に評価することが重要です。
そして、MRIなどの専門検査が必要な場合は、当院から外部施設への紹介を行い、
飼い主様と一緒に最適な診断・治療を進めていきます。
「最近、猫ちゃんの様子が少しおかしい」「一度倒れたことがある」
そんなときは、早めにほさか動物病院までご相談ください。
早期対応が、猫ちゃんの命と生活の質を守ります。