血液科

こんな症状はありませんか?

  • 元気がなく、ふらつく
  • 歯ぐきが白い(貧血)
  • 目や皮膚、口腔などが黄色い(黄疸)
  • 出血が止まらない
  • 検査で血液の異常があるといわれた

犬の主な血液科の病気

免疫介在性溶血性貧血(IMHA)

犬も外敵(細菌やウイルス)から自身を守るための免疫機構があります。この免疫がなんらかの理由により、自身の赤血球を敵と認識し壊してしまうことで貧血に陥ってしまう病気です。
治療は過剰な免疫を抑えるために、ステロイドやその他の免疫抑制剤、貧血が重度の場合には輸血、ヒト免疫グロブリン製剤の投与、再生医療(脂肪幹細胞移植)などがあります。また、外科手術による脾臓摘出が適応となることもあります。
この病気では合併症である血栓症があり多臓器不全や出血傾向にも注意が必要です。

免疫介在性血小板減少症(IMTP)

血小板は血液中に存在し、出血した際に集まって塊を作ることで止血に重要な役割を果たします。免疫介在性血小板減少症は過剰な免疫が血小板を敵と認識し壊してしまうことで、皮膚の紫斑(内出血)、鼻血や血尿、歯肉からの出血、血便などの出血傾向を示しすことがあります。治療としてはIMHA同様、免疫抑制剤を中心に行います。

フォンウィルブランド病(vWD)

止血に必要な成分であるフォンウィルブランド因子が遺伝的、先天的に少ない、機能が弱いことで止血異常(血が止まりにくい)が起こる疾患です。
犬の遺伝性止血異常の中では最も多く、ドーベルマンピンシャー、シェットランドシープドック、バーニーズマウンテンドックなどの他、特にウェルシュコーギーベンブロークで高頻度に発生するとされ、10~15頭に1頭が罹患犬になる可能性もあると見積もられています。
多くは無症状で、手術に際して初めて止血異常が問題となることもあります。
検査として頬側粘膜出血時間(BMBT:唇の内側の粘膜に一定のサイズ、深さの小さな切り傷を付け、その傷からの出血が止まるまでの時間を測定する検査)や遺伝子検査などを必要に応じて行います。

猫の主な血液科の病気

免疫介在性溶血性貧血(IMHA)

猫も犬と同様に自己の赤血球を攻撃、破壊してしまうIMHAがあります。
原因として猫白血病ウイルスなどの感染やリンパ腫などの血液系の腫瘍によって二次的に発症することもあります。診断は他の貧血を起こす疾患との鑑別や併発疾患の確認が重要となるため、検査も多く必要です。治療はわんちゃんと同様免疫抑制剤を中心に実施します。

腎性貧血

腎臓はエリスロポエチンという赤血球の産生を促すホルモンを作っています。
慢性腎臓病では腎臓機能の低下だけでなく、エリスロポエチンの産生低下による慢性貧血が認められることがあります。通常貧血の進行はゆっくりとしているため、ふらつきや呼吸が苦しいといった症状は現れにくいですが、治療としては赤血球の生産を刺激するお薬を投与して貧血の進行を抑えます。

猫白血病ウイルス(FeLV)

FeLVに感染発症すると初期は発熱、元気や食欲の低下、リンパ節の腫れなど他の疾患でも見られる症状を示します。ウイルスを排除できれば初期症状だけで落ち着くこともあります。持続感染に移行するとウイルスは骨髄で増殖して貧血を起こしたり、リンパ腫や白血病、免疫が関与する疾患(免疫介在性溶血性貧血やぶどう膜炎など)を発症しやすくなったり、免疫力の低下から口内炎や下痢が起こりやすくなります。
主に唾液を介して感染するため、感染猫とのケンカや食器の共有、グルーミングが主な感染経路となる他、母猫からの母乳や胎盤を介して感染することもあります。
特に免疫力のまだ不十分な子猫の時期には感染、発症しやすい傾向があります。
治療はウイルスを除去する治療は確立されておらず、症状に合わせた対症療法や栄養、環境面でのサポートや避妊や去勢手術によってストレスの緩和や免疫力の向上を図ることが中心となるため、予防が重要な疾患の一つです。
予防策としては可能であれば完全室内生活とし、感染猫との接触を避けることが第一です。外にでる猫や同居猫が感染している場合にはワクチン接種により、予防することもあります。
診断は血液検査で判定を行います。感染直後には、感染していても陰性となることがあったり、ウイルスを排除できた場合には陽性と出た後に陰性に転じることもありますので検査タイミングや解釈についてはご相談ください。

ほさか動物病院
血液科診療の3つの特徴

原因究明のための検査

血液疾患の原因は複雑でその背景や原因に別の病気があることも少なくありません。そのため血液検査のみならず、レントゲン(X線)や超音波(エコー)などにより腫瘍や体の中の出血の有無をチェックしたり、鎮静/全身麻酔下での骨髄検査にて骨髄の異常の有無を確認し原因を追究します。

安全性と有効性の高い輸血

輸血は血液という臓器の移植です。そのため、輸血にも副反応やリスクが伴います。
当院では適切な管理による安全性や有効性の高い輸血を重視しています。輸血前に血液型の判定を行った上で、クロスマッチ試験(実際に輸血を受ける動物の血液とドナーの血液を混ぜたときの反応を試験管内でみる)により不適合を防ぎます。

予防から術後ケアまで一貫したサポート体制

IMHAやIMTPといった血液疾患の中には免疫抑制剤の投与が選択される疾患もありますが、十分な治療反応が得られない場合や免疫抑制剤の副作用に悩まされる場合もあります。
また、再生不良性貧血など治療が難しい病気もあります。
血液疾患の一部にも再生医療による症状の改善や併用薬の減量が認められています。当院では動物再生技術研究組合に加入し品質管理をされた脂肪肝細胞を点滴で投与する治療を実施しています。
まだまだ治療成績などの情報の少ない部分もあり、実際に投与するべきかについては十分なご相談が必要ですが、一つの選択肢としてご提案が可能です。

診療の流れ

1

受付・問診

問診は一般的な内容に加え、海外渡航歴(バベシア症など血液感染症の可能性はないか)や輸血歴、血縁のある犬猫の既往歴(遺伝的な疾患の可能性はないか)、同居動物について(輸血が必要な場合のドナー候補になりえるのか)などもお伺いすることがあります。

2

身体検査

粘膜の色(貧血や黄疸の有無)、紫斑(アザ、出血傾向の可能性)の有無、呼吸の様子(緊急性の把握)の他、全身的な状態をチェックします。

3

検査

症状や状態に応じて血液検査、画像検査(レントゲンやエコー)、骨髄検査、輸血が必要と判断された場合には血液型やクロスマッチ試験を行います。動物への負担やリスク、費用などご説明した上で、どこまでの検査を行うかご相談し、実施します。

4

検査結果の説明・治療方針のご相談

検査の結果に基づき考えられる疾患、その時の状態や今後の見通しについてご説明し、治療を開始します。状態によっては輸血や入院をご提案させて頂くこともございます。

5

お会計・次回の予約

血液疾患においては一度症状が改善したとしてもその後の経過観察が非常に重要です。特に免疫抑制剤の投薬が必要な疾患では薬の量や頻度、副作用の有無の把握のため定期的な診察にご協力いただきます。

診療料金

検査費用

血液検査 8,900円〜
腹部超音波検査 5,000円
血液型検査 6,000円
クロスマッチ試験 5,000円(+ドナーの血液検査料金 6,000円)

治療費用

新鮮血輸血 35,000円~(別途入院費や注射費用がかかる可能性もございます)
ガンマガード注射 23,000円~
免疫介在性溶血性貧血の場合 お薬代 14日分 約20,000円~

血液科担当の獣医師

獣医師山下 恭平

所属学会・資格等

  • ・日本獣医輸血研究会
  • ・日本獣医輸血研究会 認定輸血コーディネーター

血液疾患では、これまで元気に過ごしていた動物が突然に元気がなくなり、数日のうちに危険な状態へと変化してしまうことも少なくありません。また、一度治療すればよいということではなく、生涯に渡って投薬や経過の観察を必要とする場合もあります。
輸血治療にもリスクが伴います。
そうした不安を抱えて来院されるご家族の気持ちに寄り添い、十分にご説明した上で一緒に治療していくという気持ちを大切に診療致します。

※輸血は命をつなぐ上でしばしば必要になりますが、人工血液がなく、法的に血液製剤の運搬ができない獣医領域での輸血事情は非常に切迫しています。
当院でもドナー確保は大変苦しい状況です。
多くの方に輸血治療の現状について知って頂きますとともに健康で比較的若い、わんちゃん・ねこちゃんとそのご家族の中でご協力いただける方はドナー登録についてもご検討頂けますと幸いです。

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