【動物病院監修】猫ちゃんが元気がないときに考えられる病気~消化器疾患・慢性膵炎に注意~

【動物病院監修】猫ちゃんが元気がないときに考えられる病気~消化器疾患・慢性膵炎に注意~
の全文をお示しします。

内容は「ほさか動物病院」の検査体制を反映し、慢性膵炎を“除外診断・総合診断によって可能性を高めていく疾患”として丁寧に説明しています。

【動物病院監修】猫ちゃんが元気がないときに考えられる病気~消化器疾患・慢性膵炎に注意~
はじめに

相模原市・町田市・八王子市の皆様こんにちは。
相模原市緑区にある、ほさか動物病院です。

「猫ちゃんがなんだか元気がない」「食欲が落ちている」「いつもより静か」と感じたことはありませんか?
猫ちゃんは体調の変化を隠す動物です。
そのため、飼い主様が「少し変だな」と感じたときには、すでに体の中で何らかの異常が進行していることもあります。

今回は、猫ちゃんが元気をなくすときに多い消化器疾患を中心に、特に近年増えている慢性膵炎について解説いたします。

1.猫ちゃんが元気をなくすときに考えられる主な原因

猫ちゃんの「元気がない」は、さまざまな病気のサインになり得ます。
その中でも特に多いのが、消化器系のトラブルです。

消化器疾患に伴う主な症状

食欲不振

嘔吐

下痢または便秘

体重減少

毛づやが悪くなる

お腹を触ると嫌がる

これらは一見よくある症状に思えますが、慢性的に続く場合や食欲が戻らない場合は、
胃腸・肝臓・膵臓などの疾患が関係していることがあります。

2.消化器疾患の中でも注意が必要な「慢性膵炎」

猫ちゃんの慢性膵炎は、診断が難しい病気のひとつです。
膵臓は「消化酵素を出す臓器」であり、同時に「血糖を調整するホルモン(インスリン)を作る臓器」でもあります。
そのため、膵臓の異常は消化不良や体重減少、糖代謝異常など、全身に影響を及ぼします。

① 慢性膵炎とは?

膵臓に持続的な炎症が起こることで、膵組織が少しずつ破壊されていく病気です。
発症はゆるやかで、初期にはほとんど症状が見られないことも多く、
「なんとなく元気がない」「たまに吐く」「食欲に波がある」といった軽い変化から始まります。

急性膵炎のように激しい痛みや嘔吐が出るケースは少ないものの、
慢性化すると膵臓の働きが低下し、消化吸収や血糖コントロールに支障をきたします。

② 慢性膵炎の症状

食欲のむら、または食欲低下

元気がない

嘔吐を繰り返す

下痢または軟便

体重減少

被毛のツヤが悪くなる

お腹を触ると嫌がる

これらの症状は胃腸炎・肝疾患・腎臓病など他の病気でも起こり得るため、
慢性膵炎は「除外診断」や「総合的な診断」で可能性を高めていく病気とされています。

3.慢性膵炎が疑われるときの検査

膵炎は、血液検査だけで確定できる病気ではありません。
そのため、当院では複数の検査を組み合わせ、総合的に診断を行います。

当院で行う主な検査

血液検査(fPLI)
 猫膵特異的リパーゼ(fPLI)は膵炎に特異的な指標で、膵臓炎症の可能性を探る重要な検査です。

一般血液検査・肝胆道系マーカー
 膵臓と肝臓・胆嚢は密接に関係しており、同時に炎症を起こす「三臓器炎」も多くみられます。

エコー検査(腹部超音波)
 膵臓の腫れ、周囲の脂肪織の変化、胆嚢や肝臓の状態を確認します。

レントゲン検査
 他の消化器疾患や腹腔内異常を除外します。

便検査
 寄生虫や吸収不良がないか確認します。

これらの情報を総合して、膵炎の可能性を評価していきます。

4.慢性膵炎の治療法

慢性膵炎は、根本的に完治させることが難しい病気ですが、
早期に治療を始めることで症状のコントロールと進行の抑制が可能です。

主な治療内容

食事療法:
 脂肪分を控えた消化の良いフードを使用します。
 胃腸への負担を減らし、膵臓の刺激を抑えます。

輸液治療(脱水の改善):
 膵炎では嘔吐や下痢により脱水が起こりやすく、点滴で水分と電解質を補います。

制吐剤・整腸剤・胃薬:
 嘔吐や胃腸炎症を和らげ、食欲を回復させます。

抗生剤やステロイド(必要に応じて):
 炎症や感染を抑えるために使用することがあります。

ビタミンB12補充:
 慢性膵炎では吸収障害が起こりやすいため、サプリメントや注射で補給します。

糖尿病への配慮:
 膵臓のホルモン分泌が低下すると糖尿病を併発することがあるため、血糖値も定期的にチェックします。

5.ほさか動物病院の診断・治療の特徴
① 慢性膵炎を念頭に置いた総合的な診断

当院では、「膵炎の診断が難しい」ことを前提に、
血液・画像・臨床症状をすべて組み合わせて総合的に評価します。
単一検査だけで判断せず、可能性をひとつずつ丁寧に除外しながら診断を進めます。

② 消化器疾患全体を視野に入れた治療

膵炎はしばしば胆管炎や腸炎を併発します。
そのため、肝胆道系・腸・膵臓を一体として考える「三臓器炎」の概念に基づき、
体全体を整える治療を行います。

③ 猫ちゃんにやさしい検査環境

猫ちゃんはストレスに弱いため、
静かな環境で落ち着いて検査を受けられるよう配慮しています。
採血や超音波検査も猫ちゃんの負担を最小限に行います。

6.自宅でできるケアと再発予防

慢性膵炎は「良くなったり悪くなったり」を繰り返す病気です。
ご家庭でのケアが、再発予防にとても重要です。

食事は決められたものを継続:
 脂肪分の高いおやつや人の食べ物は控えましょう。

定期的な体重チェック:
 体重減少は早期再発のサインになることがあります。

嘔吐や食欲低下が見られたら早めに受診:
 軽い症状でも膵炎の再燃が隠れている場合があります。

水分摂取を促す:
 ウェットフードの併用や給水器の利用で脱水を防ぎましょう。

7.動物病院を受診すべきサイン

以下のような症状が続く場合は、膵炎を含む消化器疾患が疑われます。

食欲が落ちている、食べたがらない

何度も吐く、毛玉以外の嘔吐がある

下痢や軟便が続く

体重が減ってきた

ぐったりしている、寝てばかりいる

触るとお腹を嫌がる

早期に検査を行うことで、重症化を防ぐことができます。

8.終わりに

猫ちゃんの「元気がない」は、単なる疲れや気分の問題ではなく、
消化器を中心とした病気の初期サインであることが少なくありません。

特に慢性膵炎は、はっきりとした決定的な検査がない「除外診断・総合診断の病気」です。
症状や検査結果をひとつひとつ丁寧に組み合わせることで、ようやく見えてくる疾患といえます。

もし、猫ちゃんがなんとなく元気がない、食欲が戻らない、
または嘔吐や下痢を繰り返している場合は、早めにほさか動物病院までご相談ください。

早期の対応が、猫ちゃんの快適な生活と健康維持につながります。