症例報告

犬アトピー性皮膚炎

2018年8月7日

最近、おうちのわんちゃんがお耳をかゆがったり、手足をかじかじしていることはありませんか?
 
夏に悪化しやすい皮膚病としてアトピー性皮膚炎があります。
アトピー性皮膚炎はさまざまなアレルゲンに反応し、IgEが放出され引き起こされる皮膚の症状のことをいいます。

若い年齢から発症し、自分の免疫が異常に反応してしまう状態です。
 
症状

皮膚のかゆみ、脱毛、発疹など
 
でやすい部位

  
診断
血液検査によるアレルゲンの特定
アレルゲンを注射(皮内反応)
 
治療
シャンプー療法
→スキンケアやアレルゲンの除去
かゆみ止め(飲み薬や塗り薬)
→ステロイドや抗ヒスタミン剤など
免疫療法
→減感作療法
 注射を打つことで根治できる可能性があります。
  
アトピー性皮膚炎と似た病気で食べ物に反応して皮膚の痒みが出る食物アレルギーもあります。
食物アレルギーの場合はアレルギ―の出ない食べ物を与えることで改善します。
そのほかにもホルモンが関連する皮膚病、寄生虫症、皮膚がんもあります。
ぜひスキンシップの際にわんちゃんの皮膚をじっくり見てあげてください。
 

杉村

ハムスターの切歯過長

2018年7月11日

ハムスターの切歯過長は、前歯が本来持つ長さよりも伸びてしまう病気です。

ハムスターの切歯は生涯伸び続ける歯ですので、外傷や不正咬合、上もしくは下の切歯がなくなってしまうと摩耗されずに伸びて、本症が発症します

今回、上の切歯が欠損したことにより下の切歯が過長になったハムスターさんが来院されたので、その経過について報告します

 

症例

キンクマハムスター 1歳7ヶ月齢

下の歯が伸びているので、切って欲しいとのことで来院されました

 

経過・診断・治療

食欲・元気共に問題はなく、肉眼上、下顎の切歯の過長が認められたため、下顎切歯の過長と診断しました(写真1)

治療は、伸びすぎた歯を切除することです(写真2)

 

コメント

本症例はもともと、上顎の切歯がないことがわかっており、早期発見ができましたが、見た目ではわからないこともあるので注意が必要です(写真3)

切歯が伸びすぎると、皮膚を貫通して痛みが出たり、切歯が邪魔で食事ができなかったりします

一度このような状態になると、元に戻すのは非常に難しいため、生涯定期的な切歯の切除が必要になります

 

 

 

 

 

 

写真1

 

 

 

 

 

写真2

 

 

 

 

 

写真3

 

獣医師 榮 亮介

犬の気管支拡張症/気管支軟化症

2018年6月13日

犬の気管支拡張症/気管支軟化症

 

定義

気管支壁の弾性や筋組織が組織崩壊し、気管支の慢性の異常拡張やゆがみを起こしたもの

原因 

長期間の炎症や感染により気管支への障害が起こり気管支が拡張する

犬では好酸球性気管支炎、慢性気管支炎、細気管支炎、気管支肺炎が進行した結果生じる。

好発犬種

日本ではミニチュアダックスフントで多くみとめられる

症状

咳、呼吸困難

診断

X線検査、XCT検査:拡張した気管支の検出 ↓

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

↑ 縮んだ気管支(息を吐いた時)         拡張した気管支(息を吸った時)

動脈血ガス分析:肺の換気能力や酸素などを取り込むガス交換能力の検査

気管支鏡:炎症や感染の原因の特定

治療

不可逆性(気管支が元の状態に戻ることがない)の病気のため、症状を減らす治療(緩和治療)および進行を遅らせる治療が必要

抗菌剤、気管支拡張薬、抗炎症薬、去痰薬など

上記の薬を飲み薬またはネブライザー(噴霧吸入法)により投与

ポイント

一度拡張した気管支を元に戻すことは困難なため、原因となる疾患を早期に発見治療することが重要です。

また、拡張した気管支の機能を補助または残っている気管支の保護を目的とした治療も早期に行うことが大事と考えています

獣医師 菅沼

 

猫の異物誤食

2018年5月8日

今回は猫の異物について報告です
 

こちらのレントゲンは先日、胃内異物が見つかった猫ちゃんのものです

 

 

黒い斜線部分が通常の胃の大きさです
この猫のレントゲンでは水色のラインで胃を囲んでいます
胃がパンパンにふくらんで中に何か詰まっていることがわかります

 

そして、こちらの写真は開腹手術にてとりだした胃の中身です

ヒモや髪ゴム、毛糸、スポンジなどたくさんの異物が取り出されました

 

猫ちゃんはヒモ状のものやカサカサしたビニール、噛みごこちのよいものなど遊びながら食べてしまうことがあります
とくにヒモ状のものは腸に引っかかってしまい、アコーディオンのように引きつれてしまうこともあります
嘔吐や食欲不振だけでなく、下痢、腹痛など症状は様々ですので、おうちの猫ちゃんに誤食の可能性がある場合はすぐに獣医師に伝えてください 
おうちでは食べてしまいそうな小さいサイズのおもちゃや輪ゴム、髪ゴム、靴ひも、ビニールなどはとくに気をつけていただき、手の届かないところにしまってください

 

開腹手術は猫ちゃんにとって麻酔をかけたり、痛みを伴う手術ですのでとても負担がかかります
気をつけるだけで防ぐことのできる病気ですから、もう一度おうちの環境を見直してみてはどうでしょうか?

 

獣医師 杉村

フェレットの副腎疾患

2018年3月13日

 

フェレットの副腎疾患は、腎臓の近くにある副腎という小さな臓器が異常な働きを起こし、皮膚症状を初めとする、全身的に症状が出る病気です。

臨床症状として、脱毛、皮膚の痒み、皮膚の分泌物の亢進、被毛の変色、乳頭や乳腺の腫大、雌の外陰部の腫大、外陰部からの分泌物、雄の排尿障害、腹部膨満などが認められます。

今回、副腎疾患を疑うフェレットさんが来院されたので、その経過について報告します。

 

症例

フェレット  4才齢

背中の毛が抜けてきて、痒そうとのことで来院されました

 

経過

来院の1-2ヶ月ほど前から背中の毛が抜けてきて、痒そうに掻いていました。

身体検査を行うと、腰背部の脱毛・発赤を主病変として、頸部や腋窩などにも軽度に同様の病変が認められました、また腹部触診によりお腹の左側に腫瘤が触れました

レントゲンでは脾臓の腫大が認められ、他に大きな問題はありませんでした。

腹部超音波検査では脾臓の腫大が認められ、左右の副腎の大きさは正常でした。

皮膚の検査を行い、細菌や真菌の感染、外部寄生虫がいないことを確認しました

 

診断

副腎は大きくなっていませんでしたが、フェレットの副腎疾患を強く疑い、内科的治療を開始しました

 

治療

月に1度のホルモンの注射による治療を行いました

1度目の注射から1ヶ月後で改善がみられましたが、まだ脱毛がありました

2度目の注射では外観上ほとんど問題ないレベルまで脱毛と発赤が改善しました

写真は治療前と、1回目の注射から1ヶ月後、2回目の注射から1ヶ月後の写真です

 

治療前

 

 

 

 

 

 

1回目の注射から1ヶ月後

 

 

 

 

 

 

2回目の注射から1ヶ月後

 

 

 

 

 

 

 

コメント

フェレットの副腎疾患は、いろいろな因子により発症すると言われており、明確な原因はわかっていません、早期の避妊去勢がそのうちの一つと言われています

治療には、大きくなった副腎を切除する外科的治療、ホルモンの注射を打ち症状を抑える内科的治療、そのほかの治療に分かれます

本症例は超音波検査で、左右の副腎のどちらも大きくなっておらず、どちらが機能的に異常をもっているのかも判断できなかったため、内科的治療を選択し、良い反応が見られました

内科的治療はあくまで症状を抑える治療で、月に1度生涯注射が必要になり、根本的な治療は外科的治療に委ねられます

どの治療を行うかは、その子の症状や状態、検査結果によりますので、同じような症状が見られましたら、動物病院に連絡をしてください

 

獣医師 榮 亮介

原発性気管虚脱

2018年2月13日

原発性気管虚脱

 気管虚脱は肺への空気の通り道である筒状の気管がつぶれるために、さまざまな呼吸器症状がみられます。

↓ つぶれた気管

原因

気管を筒状に維持している軟骨(気管軟骨)が弱くなり気管がつぶれてしまう病気です。

原因としては遺伝、首輪とリードによる外から加わる力、よく吠えるなどの気管へのふたんや高温多湿などの環境、肥満などが要因として考えられています。

気管虚脱には動的気管虚脱、原発性気管虚脱、気管支の気管虚脱に大きく分類されます

今回は原発性気管虚脱を中心にお伝えします

発症

あらゆる犬種で発生しますが、小型犬(特にヨーキー、ポメラニアン、トイプードル、マルチーズ)で多く認められます。

猫では鼻や喉に根本的な原因がありその結果として気管虚脱が発生することが多いです。(動的気管虚脱)

症状

空咳 初期「カッカッ」「ケッケッ」など表現される咳が短く認められますが、徐々に進行すると咳を連続するようになり、「カッカッカッカッ、ケー」と最後に痰を吐くような仕草が認められます。

重度になると気管の虚脱(つぶれ)による呼吸困難やチアノーゼ(舌が青紫色になること)がおこり非常に苦しい状態となります。

この頃の呼吸は「ガーガーガー」「ヒィーヒィー」といった表現をします。

診断

身体検査、レントゲン検査、動脈血液ガス検査などにより重症度を判定します

治療

内科療法(お薬による治療)は症状を抑える治療(対症療法)、原因自体の治療は困難

鎮咳薬、去痰剤、気管支拡張剤

外科療法(主に原発性気管虚脱に適応します)

手術前                 手術後

1)気管内ステント設置術 2)気管外プロテーゼ

1)気管内ステント設置術

潰れた気管の中に網目状の金属を入れることで気管を広げる方法

メリット 手術時間が短時間、体への負担が少ない(切開不要)

デメリット 長期経過によるステントの破損、

       ステントによる刺激を抑える薬が生涯必要となる

       一度設置したステントは外すことが不可能

 

2)気管外プロテアーゼ

潰れた気管の周りにアクリル製のプロテーゼを縫合設置し気管を広げる方法

気管外プロテアーゼ↓

メリット 長期的な劣化が少ない、手術後の咳を抑える薬がほとんど不要

デメリット 気管を直接触れるための合併症

手術後の合併症

 頚部の神経刺激による喉頭麻痺

 術後の皮下気腫(縫合した部位からの空気漏れ)

  よく吠える動物で多いが、714日で消失

 縫合糸に反応した咳 ほとんどが軽度で約8週間以内に軽減される

 

共通した注意すべき合併症

胸部気管虚脱および気管支虚脱の併発(胸の中の気管、気管支が潰れてしまう病気)

 手術後に呼吸困難が悪化し治療が困難な場合がある

 程度によっては胸部気管に対するステントまたは気管外プロテーゼ設置

 

多くのワンちゃんは内科療法で症状を抑え付き合っていく病気ですが、重度になると外科手術が必要になります。

初期のうちに悪化要因を減らすことが大事な病気ですので、気になる症状がありましたら一度ご相談をお勧めします

獣医師 菅沼

 

僧房弁閉鎖不全症

2018年1月9日

シニア期を迎えるおうちのわんちゃんにこんな症状はありませんか?

・おさんぽの時間が短くなってきた

・以前は遊んでいたおもちゃで遊ばなくなった

・帰ってきても玄関までお迎えにこなくなった

・寝ている時間が長くなった

 

もしかすると、単なる老化ではなく病気の可能性があります

運動をいやがる原因としては、関節や骨など運動器の異常のほかに心臓病があります

今回は心臓病のうち、犬に多い病気である僧帽弁閉鎖不全症について説明します

 

僧帽弁閉鎖不全症とは、心臓を4つの部屋に分けている弁の内、その1つがうまく閉まらなくなることで、通常とは逆の向きに血液が流れます(逆流)

 

正常

僧房弁閉鎖不全症

 
それにより、肺や心臓などさまざまな臓器に負担がかかり、最悪死に至る病気です

原因は心臓の弁膜の異常です

中~高齢の小型犬に多く、キャバリア・キング・スパニエルでは特に多いとされています

また、キャバリア・キング・スパニエルは若い年齢でも症状が現れることがあります

症状は上記のほかにもあります

・咳がでる

・ごはんの食べが悪い

・息が荒い

・体重がへった、やせてきた

・ふらつくことがある

治療としては手術による外科治療もありますが、薬による内科療法が一般的です

内科療法の内容としては

・血圧をさげる

・心臓の収縮力をあげる

・心拍数を抑える

・血管を拡張させる

・血液中の余分な水分を尿として出す

など複数の薬を組み合わせながら治療していきます

僧帽弁閉鎖不全症は薬で完治はできませんが、薬を飲むことで寿命を延ばすことのできる病気です

また、病気が悪化していくと肺水腫や血栓症、発作などをおこし、命を脅かす危険が増していきます

 

 

当院では循環器認定医である院長をはじめとし、心臓病を得意とする獣医が在籍しております

若い頃の様子と変わったことがあれば病気のサインかもしれません

ぜひ、ご相談ください

猫の下部尿路疾患

2017年12月5日

こんにちは、いよいよ師走!大掃除に餅つきなど忙しい季節になりましたね
比較的冬場に多く見られる疾患といえば猫の下部尿路疾患です
猫下部尿路疾患(FLUTD)は猫の下部尿路に生じる疾患が原因となって引き起こされる臨床症状の総称です

FLUTDの原因としては膀胱炎における血餅や細菌塊、ストラバイトなどの結晶、腫瘍や機能的な閉塞などいくつかありますが原因の特定が困難なケースもあります
重症の場合には尿路結石や尿道栓子によって尿道が閉塞し、おしっこが出なくなります
何度も繰り返してしまう猫ちゃんでは手術を検討することもあります
先日尿道閉塞で来院された症例を報告します
未去勢雄、スコティッシュフォールドの猫ちゃん
昨夜から元気食欲不振、今朝からはよだれがとまらず起き上がることができない、一週間前にはおしっこに血が混じっていたとのことで来院されました
来院時は口を開けて息をしており、横になって立てない状態でした
お腹を外から触ると膀胱がカチカチに膨らんでおり、腹部レントゲンで膀胱におしっこが溜まっている様子が確認できました

血液検査では腎後性急性腎不全という症状が引き起こされていることが確認され、
原因は、膀胱炎によって生じた赤血球などの成分が尿道に詰まっている事が分かりました

直ちに尿道の先端からカテーテルを挿入し、尿道閉塞を解除する処置を行いました
尿道カテーテル設置後も数日間は血尿が続きましたが、その後は静脈点滴による輸液療法と尿道カテーテルからの排尿処置により3日目には血液検査および状態は安定し、ごはんも食べてくれるようになりました

今回の症例は尿道閉塞のなかでも非常に危険な状態でした
予防としては適切な食事管理、水分を十分にとる、トイレを清潔に保つなど生活環境の改善が推奨されますが先にも述べたように、原因の特定が困難な場合もあります
尿道閉塞で命を落としてしまう可能性もあるのでおしっこの量が少ない、頻尿、血尿、排尿姿勢をしてもおしっこが出ないなどの症状が見られた場合は速やかに受診をおすすめします
また、おしっこの異常を早期発見するためにバースデー検診やアラサー、アラフィフ検診などをぜひ活用してみてください

獣医師 酒井亜未

引用
SAMedicine 犬と猫の治療ガイド

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