【動物病院監修】猫ちゃんのリンパ腫の原因と対処法～早期発見が大切な血液のがん～
はじめに

相模原市・町田市・八王子市の皆様こんにちは。
相模原市緑区にある、ほさか動物病院です。

今回は、猫ちゃんの「リンパ腫」について詳しく解説いたします。
リンパ腫は、猫ちゃんで最も発生頻度の高い腫瘍（がん）のひとつです。
「最近、食欲が落ちた」「元気がなくなった」「お腹が張っている」など、
日常のちょっとした変化から見つかることもあります。

早期に気づき、適切な治療を行うことで、
多くの猫ちゃんがより快適に過ごすことができます。

1．猫ちゃんのリンパ腫とは？

リンパ腫とは、「リンパ球」という免疫を担当する細胞が腫瘍化した病気です。
リンパ球は全身のリンパ節や脾臓、消化管などに存在しているため、
体のどの部分にも発生する可能性があります。

猫ちゃんのリンパ腫は、発生部位によっていくつかのタイプに分けられます。

2．猫ちゃんのリンパ腫の主なタイプと症状
① 消化器型リンパ腫（最も多いタイプ）

腸（特に小腸や大腸）に発生するリンパ腫です。
症状としては、

嘔吐

下痢

食欲不振

体重減少

元気がない
といったものが見られます。

慢性的な腸炎と似た症状を示すため、見分けるには精密な検査が必要です。

② 縦隔型リンパ腫

胸の中（肺の間の縦隔）にできるタイプです。
胸水がたまることで呼吸が苦しくなり、
「呼吸が速い」「息が荒い」「動くと苦しそう」といった症状が見られます。

若い猫ちゃんでは、猫白血病ウイルス（FeLV）の感染が関係していることもあります。

③ 腎型リンパ腫

腎臓に発生するリンパ腫です。
腎臓が腫れることで腎機能が低下し、

水をよく飲む（多飲）

おしっこの量が増える（多尿）

食欲不振

嘔吐
といった症状が見られます。

④ 鼻腔型リンパ腫

鼻の中や副鼻腔に発生し、

鼻づまり

鼻血

くしゃみ

鼻水（特に片側）
といった呼吸器症状を示します。

鼻腔型リンパ腫は、早期に治療を行えば比較的コントロールしやすいタイプとされています。

⑤ 多中心型リンパ腫

全身のリンパ節が腫れるタイプです。
首やわきの下、内股のリンパ節が触れるようになり、
発熱・食欲不振・体重減少などが見られます。

3．猫ちゃんのリンパ腫の原因とは？

リンパ腫の明確な原因はまだ完全にはわかっていませんが、
いくつかの要因が関係していることが知られています。

猫白血病ウイルス（FeLV）感染
　若い猫ちゃんの縦隔型リンパ腫との関連が強いです。

猫免疫不全ウイルス（FIV）感染
　免疫力の低下によって腫瘍発生リスクが高まります。

慢性的な炎症
　消化管炎症などが長期に続くと、リンパ球の異常増殖につながる場合があります。

加齢・遺伝的要素
　高齢猫ちゃんでは自然発症するケースもあります。

4．ほさか動物病院での検査方法

当院では、猫ちゃんのリンパ腫を正確に診断するために、
以下のような検査を行っています。

身体検査・触診：リンパ節やお腹のしこり、胸の音を確認します。

血液検査：貧血、白血球異常、腎臓・肝臓機能など全身の状態を評価します。

レントゲン検査：胸やお腹の腫瘍・リンパ節の腫れ・胸水の有無を確認します。

超音波検査（エコー）：腸・肝臓・腎臓などの内部構造を観察します。

細胞診・病理検査：針で採取した細胞を顕微鏡で確認し、確定診断を行います。

ウイルス検査（FeLV・FIV）：背景に感染症が関係していないかを調べます。

これらの検査を組み合わせることで、リンパ腫の種類や進行度を把握し、最適な治療計画を立てます。

5．猫ちゃんのリンパ腫の治療方法

リンパ腫は「がん」ではありますが、治療によって**長期の延命や寛解（症状が消える状態）**を目指せる病気です。
猫ちゃんの状態に応じて、以下のような治療を行います。

① 化学療法（抗がん剤治療）

最も一般的な治療法です。
複数の薬剤を組み合わせて投与する「多剤併用療法」が中心となります。
点滴または注射で投与し、副作用をできるだけ抑えながら腫瘍の縮小を目指します。

治療の目的は「完治」ではなく、「腫瘍の進行を止め、生活の質を維持する」ことです。
多くの猫ちゃんが、治療を受けながら普段どおりの生活を送れています。

② ステロイド療法

軽度の場合や、全身状態により抗がん剤が難しい場合には、
ステロイド単独で炎症と腫瘍の進行を抑える治療を行います。

ステロイド治療だけでも一時的に症状が改善することがありますが、
効果は一時的で再発しやすいため、継続的な経過観察が必要です。

③ 食事療法・対症療法

食欲不振・嘔吐・下痢などの症状に対して、
栄養バランスを整え、消化に優しいフードを使用します。
また、吐き気止めや整腸剤、サプリメントを併用して体調をサポートします。

④ 放射線療法（必要に応じて外部施設紹介）

鼻腔型リンパ腫など、局所的なタイプでは放射線療法が有効な場合があります。
この治療が必要な場合には、外部の専門施設をご紹介いたします。

6．ほさか動物病院のリンパ腫治療の特徴3つ
① 丁寧な検査でタイプを見極める

リンパ腫は発生部位や進行度によって治療内容が異なるため、
当院では、超音波検査や細胞診を活用して「どのタイプか」を正確に特定します。

② 体調に合わせたオーダーメイド治療

猫ちゃんの年齢・体力・性格に合わせて、治療強度や投薬方法を調整します。
「無理のない治療で少しでも長く穏やかに過ごす」ことを目標にしています。

③ 継続的なサポート体制

治療後も定期的な再検査を行い、再発や副作用を早期に察知します。
ご家庭でのケア方法や食事の工夫についても丁寧にアドバイスいたします。

7．自宅でのケアと注意点

薬は決められた時間に正しく投与しましょう。

食欲や排便の変化を観察し、記録しておくと診察時に役立ちます。

嘔吐・下痢・ぐったりするなどの変化が見られた場合は、早めにご連絡ください。

安静で静かな環境を整え、猫ちゃんのストレスを減らすことも重要です。

8．終わりに

猫ちゃんのリンパ腫は、早期発見と継続的な治療がとても大切です。
「高齢だから仕方ない」と思われる症状の中に、実はリンパ腫が隠れていることもあります。

近年は、抗がん剤治療の進歩により、
多くの猫ちゃんが穏やかな生活を維持できるようになっています。

食欲がない、体重が減った、元気がない、下痢や嘔吐が続くなどの症状が見られたら、
早めにほさか動物病院までご相談ください。

私たちは、猫ちゃんとご家族が少しでも長く快適に過ごせるよう、
最善のサポートを行ってまいります